前回に引き続き、福利厚生についてみていきましょう。
繰り返しになりますが福利厚生は、従業員のモチベーションアップ、従業員の定着など経営を円滑に行うのにとても重要な役割を果たすことがあります。
ぜひ、うまく福利厚生を活用して従業員の満足度をあげましょう。それでは、どのような福利厚生費があるかみていきましょう。
代表的なものとして次のようなものがあります。
・忘年会などの慰安会
・社宅(今回検討)
・社員旅行(掲載済み)
・慶弔見舞金
・残業時の食事代
・外部の福利厚生サービスの利用
・通勤費
・健康診断費用
・常備薬
・社内同好会への補助
・制服代
・レクリエーション旅行
・保養所
・研修旅行
・保険
・永年勤続表彰
さまざまな福利厚生があることがわかると思います。
今回は、この中から社宅について検討してみます。
《質問》
以前に社員旅行について給与課税されないで福利厚生費として認められる要件について聞きましたが、他にも福利厚生になるものとして社宅があると耳にしましたが、どのような場合に社宅が福利厚生として利用できるのか教えてください。
《検討》
社宅を福利厚生として利用することができれば、転勤先や遠くからの採用をする上で有利になることもあるでしょう。従業員のメリットとしては、なんといっても安い賃料で住むことができるということです。これは最大のメリットになるでしょう。
さらには、所得税や住民税、社会保険料が安くなります。社会保険料が安くなるということは将来受け取る年金も減少することになるので、これについてはデメリットと感じる人もいるでしょう。また、会社としても安定的な雇用につながることも考えられます。
それでは、社宅が福利厚生として認められるかの要件をみましょう。
まず、社宅とはどういうものをいうでしょうか。
社宅とは役員や社員の福利厚生の一環として会社が用意した住居のことをいいます。中小企業では、賃貸マンションを借りて、それを社宅とする場合が多いです。こういう社宅を『借上社宅』といいます。
【要件】借上社宅が経費となる要件は次のようになっています。
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会社名義で会社が借りること
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1か月当たり一定額の家賃(以下『賃貸料相当額』という)を役員・従業員から徴収すること
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水道光熱費は従業員負担であること
①~③のうち①と③は、そのままなのでわかりやすいと思います。
問題となるのは②の『賃貸料相当額』とはいくらなのかということです。
まず、簡単な方法としては、節税効果は小さくなりますが、会社が支払っている家賃の50%以上を役員・従業員(従業員の場合は少し異なります)から徴収している場合には、賃貸料相当額を徴収していることになります。
50%以上徴収しない場合の社宅についてみてみましょう。
社宅については役員社宅と社員社宅とにわけられます。
1 役員社宅
① 『社宅の種類』
次の3種類に区分されます。
Ⅰ 豪華社宅‥原則、床面積が240㎡超をいいます
Ⅱ 小規模な社宅以外の社宅
木造家屋の場合:床面積が132㎡超240㎡以下(共用部分含む)
木造家屋以外の場合:床面積が99㎡超240㎡以下(共用部分含む)
Ⅲ 小規模社宅
木造家屋の場合:床面積が132㎡以下(共用部分含む)
木造家屋以外の場合:床面積が99㎡以下(共用部分含む)
② 『賃貸料相当額』
役員に対して社宅を貸与する場合は、役員から賃貸料相当額の家賃をもらえば、役員に対して給与課税されません。
区分ごとの給与課税されない賃貸料相当額は次のようになります。
区 分 | 賃貸料相当額 |
小規模社宅以外 (自己所有) |
次の①と②の合計額 ①その年度の建物の固定資産税の課税標準額×12%×1/12 |
小規模社宅以外 (借上社宅) |
次の(1)と(2)のうちいずれか多い金額 (1)次の①と②の合計額 (2)支払家賃の50% |
小規模社宅 |
次の(1)から(3)の合計額 (1)その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2% ※自社物件ではなく他者から借りたマンションなどを会社が借りて役員に貸す場合も上記の算式で計算した金額になります。 |
2 従業員社宅
1で役員の場合の賃貸料相当額を確認しましたが、従業員の社宅家賃についても確認しましょう。
社員社宅も社宅の区分ごとに賃貸料相当額が決められています。社員の場合は社宅を区分する必要はありません。区分しない理由としては、通常は社員に豪華な社宅を賃貸することは考えにくいからだと思われます。
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従業員社宅は社宅の区分をする必要が無いのでここでは賃貸料相当額の確認をします。
社員に無償で貸す場合には、この賃貸料相当額が給与課税されます。
社員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合には、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が給与課税されます。
しかし、社員から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は給与課税されません。
実務上、借上社宅の場合には会社が支払う家賃の半分以上を役員・従業員から徴収していることが多いと思われます。
その理由は、上記算式で計算した金額よりも借上社宅家賃の50%の方が高い場合が多く、借上社宅の固定資産税の課税標準額を調べる必要があるため、固定資産税の課税標準額を調べずに済むためと思われます。
固定資産税の課税標準額の確認は、不動産の所有者に確認するのが一番早いですが、聞きにくいという方も多いと思います。それでは、確認できないのかというとそうでもありません。賃借人側で調べることも可能です。固定資産税の課税標準額は市役所等で確認します。
ただし、固定資産税評価額は誰でも教えてくれるわけではありません。賃借人であることを証明するために必ず賃貸借契約書を持参するようにしましょう。
具体例をみてみましょう。
(例)賃貸料相当額が3万円の社宅を社員に貸した場合
(1) 社員に無償で貸した場合
⇒3万円が給与課税
(2) 社員から1万円の家賃を受け取る場合
⇒賃貸料相当額である3万円と1万円との差額の2万円が給与課税
(3) 社員から2万円の家賃を受け取る場合
⇒2万円は賃貸料相当額である3万円の50%以上ですので、賃貸料相当額である3万円と2万円との差額の1万円は給与課税されません。
以上が社宅を利用した福利厚生対策となります。
ぜひ、うまく活用して従業員の福利厚生の満足度をあげましょう!
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