それは本当に重加算税?

売上が漏れていたら重加算税になると思いますか?

それだけでは重加算税の対象になるとは言い切れません。

対象となるのは故意に売上除外をした場合です。

計算ミスや事務処理上の連絡ミスなどが原因で売上が漏れていた
場合は重加算税の対象にはなりません。

国税不服審判所の裁決でも事業所得を申告していなかったことのみでは
重加算税の対象とはならないとしている。(平28-07-04公表裁決)

これは給与所得と譲渡所得のみ申告し、事業所得を一切記載しないで申告
していたものであるが、国税不服審判所は過少申告等の意図は認めるが
その意図を外部からもうかがい得る特段の行動がなかったとして
重加算税は取り消されています。

このように、重加算税になるか否かを理解しておくことは非常に
重要です。

あくまでも、二重帳簿の作成など典型的な隠ぺい・仮装があった場合、
典型的な隠ぺい・仮装は無い場合に税を免れる意図とその意図を外部から
もうかがい得る特段の行動があった場合に重加算税が課されるという
ことになります。

重加算税の対象にならないのに重加算税が課されることがないように
注意してください。

重加算税の知識が無いために、間違って指導で重加算税と言われたときに

対応できなかったなんてことにならないようにしましょう。

さらに詳しくみていきましょう。長文です。

重加算税が課されるのはどういうときか・・・


重加算税は⼆重帳簿の作成や架空仕⼊などが代表的なものであるが、

これらのように具体的な⾏為が無かった場合でも、

納税者に税を免れる意図があり、その意図を第三者が客観的にみて

明らかに税を免れるために⾏った⾏為があれば重加算税は課されることになる。

例えば、在庫の過少計上で考えると、偽りの在庫表を作成し1000 あるのに500 しか無いとして申告をしたら重加算税は課されることとなるが、適正な在庫表を作成し計算過程で誤りがあった場合は税を免れる意図はなく、単なるミスであるため重加算税は課すことはできないこととなる。

しかし、実務上は計算ミスであっても在庫が少ないというだけで重加算税を課すといわれることもあるかもしれない。

その時に、重加算税の対象にはならないとしっかり対応できるようにしておくべきである。

誤りの指摘をすること⾃体が問題ではあるが・・・。


以下は、重加算税制度の成り⽴ち、判例や学説をざっくりと解説しています。

昭和22 年4 ⽉1 ⽇から従前の賦課課税制度から申告納税制度に移⾏したことに伴い、重加算税制度の前⾝である追徴税制度が誕⽣しました。

その後、シャウプ勧告により追徴税制度は重加算税制度に移⾏することとなりました。

申告納税制度は納税者の正しい申告がなされることを前提とし、申告秩序維持のために適正な申告をしない者に対して⼀定の制裁が加えられる。

この制裁が加算税制度である。

加算税制度のうち、重加算税は隠ぺい⼜は仮装という

不正⼿段を⽤いた場合に特別に重い負担を課すものであり、特別に重い負担を課すにあたり隠ぺい⼜は仮装の有無の判断は慎重に⾏われる必要があります。

重加算税は⾏政上の制裁であり、税務官庁が認定する隠ぺい⼜は仮装の⾏為は客観的・外形的なものに限られるべきであります。

しかし、現在の法律では隠ぺい⼜は仮装について明確な定義付けがされていないこと
から、様々な議論がなされています。

典型的な隠ぺい⼜は仮装とは、国税庁公表の事務運営指針では⼆重帳簿の作成等、架空仕⼊の計上、虚偽答弁等などと定義されています。

裁判例も同様に定義しているが、隠ぺい⼜は仮装とは、「租税を逋脱する意図をもって」事実を隠匿することと判⽰している判決もあります。

この逋脱の意図は重加算税賦課の要件では無いが隠ぺい⼜は仮装を認識していたことを補完するための⼀要素と解されるでしょう。

典型的な隠ぺい⼜は仮装を判断するにあたり、故意の存在の有無が問題となるが、通説は課税要件事実を隠ぺい⼜は仮装する認識があれば⾜り、その後の過少申告等の認識は必要ないとされている。

これは典型的な隠ぺい⼜は仮装がある場合は、隠ぺい⼜は仮装の認識と過少申告等の結果は必要であるが、税を免れる意図までは必要としないとしている。

判例をみてましょう。

最判昭和62 年5 ⽉8 ⽇においても過少申告を⾏うことの認識を有していることまでを必要としないとしています。

ところが、典型的な隠ぺい⼜は仮装が無い事案である最判平成7 年4⽉23 ⽇では「所得を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の⾏動」をした場合には重加算税を賦課すると判⽰したことから、過少申告に対する認識の要否が問題となりました。

次に学説をみてみましょう。

学説は、おおまかに以下の通りに分かれています。

・積極説
重加算税の賦課は、国税通則法第68 条の⽂⾔にのみに拘泥すべきではなく、重加算税の⽴法趣旨を考慮し、申告前後の事実関係全体からみて課税を免れることを意図して虚偽の申告書を提出した場合には重加算税の賦課要件を満たすとする説です。

・消極説
積極的な隠ぺい⼜は仮装の事実の伴わない、単に、納税申告書だけを過少にすることは⽂理上、重加算税の賦課要件を具備しないとする説です。

<解説>
積極説は、国税通則法の⽂⾔のみでなく、重加算税の⽴法趣旨を考慮し典型的な隠ぺい⼜は仮装の⾏為と同⼀視できるような事実があれば重加算税の賦課要件を充⾜するとしているのに対し、消極説は、国税通則法の⽂⾔のみに沿って重加算税の賦課決定をするとしている。
これらを踏まえると、重加算税の制度趣旨は、過少申告加算税や無申告加算税よりも重い⾏政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発⽣を防⽌し、申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとすることであるので、典型的な隠ぺい⼜仮装の⾏為が無いから重加算税を賦課しないということは租税公平性の観点からも適当ではないだろう。積極説の⽴場が妥当であると思われるが、税を免れる意図の有無は納税者の内⼼という主観的なものであることから、課税庁側の恣意性を排除するためにも納税者が税を免れる意図を有していたことが客観的・外形的である必要ががあるのです。

また、特段の⾏動についても同様に客観的・外形的でなければならないでしょう。

最⾼裁判例の中でつまみ申告事案が2 例あります。

・最判平成6 年11 ⽉22 ⽇は、具体的な隠ぺい⼜は仮装の⾏為を判⽰せず、ことさらの過少申告の事案である最判昭和48 年3 ⽉20 ⽇を引⽤していることからも、税を免れる意図に重きをおいたものと考えられます。

・最判平成7 年4 ⽉23 ⽇は、客観的・外形的に過少申告の意図と特段の⾏動を併せて隠ぺい⼜は仮装と同⼀視できるものと判⽰したものであり、⾏政上の制裁である重加算税の賦課に際して税務署⻑の判断基準を、より客観的・外形的ならしめようとする制度趣旨に沿ったものでもあるので、積極的な不正⾏為が無い場合の重加算税の賦課決定を判断するのに意義のある判例になったものと思われます。


また、無申告の場合についてですが、無申告はそもそも帳簿書類の改ざん・隠匿などの積極的⾏為が無いと想定されることから、⽂理上、重加算税を賦課できないと考えられます。

無申告事案もつまみ申告同様に⽂理上のみならず、重加算税の制度趣旨を考慮し、隠ぺい⼜は仮装の有無を判断する必要があろう。国税不服審判所の裁決例においても、税を免れる意図があり、その意図を外部からもうかがい得る特段の⾏動があった場合に重加算税が賦課されています。

 

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